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吼える月
第7章 帰還
 


 このままだと駄目だ、サクの枷になってしまう……。


 抗う心に反するように、体が動かない。思考が巡らない。


 サクやサラを気遣わせぬよう、笑うことさえ適わない。

 心に従った表情が作れない。

 今までしていた喜怒哀楽が、作れない。どう作ればいいのかわからない。


 今の自分は――。

 まるで……歩いているだけの、生ける屍だ。



 ……もしも自分が、リュカを待って私室にずっといたのなら、今頃、見る景色は違っていただろうか。


 ――否、リュカは自分を抱き、よくわからぬ"玄武の鍵"とやらを手に入れ、あ金色の元に駆けつけただろう。


 どちらにしても、自分は……リュカにとっては道具であり、捨て駒なのだ。どちらにしても、これが定められた……自分の運命には違わないのだ。


――苦しみ続けろ、永遠に。


「リュカ……」


 苦しい。

 苦しくてたまらない。


 憎悪を心に抱えて生きるということは。


 憎んでいるのなら、どうして殺してくれなかったのか。





「………っ」


 ……ユウナがリュカの名を呟く理由は恋しさゆえと思うサクが、密やかに顔から笑みを消して憂えた息をついたことに、ユウナは気づいていなかった。

 そんなサクを、悲哀に満ちた眼差しで見つめているサラを、サクもまた、気づいていなかった。



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