この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第7章 帰還
このままだと駄目だ、サクの枷になってしまう……。
抗う心に反するように、体が動かない。思考が巡らない。
サクやサラを気遣わせぬよう、笑うことさえ適わない。
心に従った表情が作れない。
今までしていた喜怒哀楽が、作れない。どう作ればいいのかわからない。
今の自分は――。
まるで……歩いているだけの、生ける屍だ。
……もしも自分が、リュカを待って私室にずっといたのなら、今頃、見る景色は違っていただろうか。
――否、リュカは自分を抱き、よくわからぬ"玄武の鍵"とやらを手に入れ、あ金色の元に駆けつけただろう。
どちらにしても、自分は……リュカにとっては道具であり、捨て駒なのだ。どちらにしても、これが定められた……自分の運命には違わないのだ。
――苦しみ続けろ、永遠に。
「リュカ……」
苦しい。
苦しくてたまらない。
憎悪を心に抱えて生きるということは。
憎んでいるのなら、どうして殺してくれなかったのか。
「………っ」
……ユウナがリュカの名を呟く理由は恋しさゆえと思うサクが、密やかに顔から笑みを消して憂えた息をついたことに、ユウナは気づいていなかった。
そんなサクを、悲哀に満ちた眼差しで見つめているサラを、サクもまた、気づいていなかった。