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吼える月
第36章 幻惑
『また四凶は、我らのような信頼関係などあらぬ。本能のまま生きて、ひとでも魔でも貪欲に食らう。敵も味方もないのだ』
「だったらたとえば、共食いなど始めたら?」
ラクダは目を瞬かせて言う。
『なんと突拍子もなきことを考える小童よ。そんなことを始めてしもうたら、食らわれたものの力を取り入れ、食ったものが力を強める。ひとつが他三つを食らったら、ジョウガに匹敵するほどの力を持つだろう。そうなれば我ら四神獣、全盛期の力を持ってして抑えられるかどうか』
「だったらたとえば……、神獣が力を与えている祠官や武神将を食らうと、どうなる?」
――シンジュウノチカラモツモノヲクライ、シシンジュウノフウインヲトイテ……。
声はそう言っていた。
だがなにが望みだったのかは、サクには思い出せずにいた。
『同じ原理よ。我らの力が四凶の力となす。そんなことをされれば封印は揺らぐであろう。然れど、四神獣の力を持つ者を易々と食らうことは……』
「今は四神獣の危機。非常事態なんだろう?」
サクは、先ほど食われそうになっていたということは黙っておいた。
『小童よ。なぜ唐突に四凶のことを我に尋ねるのだ?』
「いや……、気になるだろう? 知らない事実っていうのがさ」
サクは笑って誤魔化す。
十中八九、自分は四凶のひとつと契約をしてしまったのだろう。
そして体内にいるそれは、コントンを食らい、力をつけた。
まだ玄武刀に宿る玄武の力が勝っているから、引き下がったのだろうが、また現れた時に玄武の力が効いているかどうかは定かではない。