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吼える月
第37章 鏡呪
 
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 意識ないはずの神獣玄武により、玄武刀を託された黒陵国の姫ユウナの尽力で、玄武の武神将であるサク=シェンウを取り込もうとしていた邪なる力はひとまず退散した。

 恋心を自覚するユウナに気づかないサクは、かつての蒼陵国での青龍殿の作りと同じく、自分達は罠だらけの空間を下って中心に向かっていたのではないかと推測する。

 そんな最中、玄武の力を秘める玄武刀が映し出したのは、青龍の祠官の息子であるテオンと、青龍の武神将ジウ=コンロンの息子シバがいる一行の姿であり、刀に導かれるまま駆ける。

 一方、この棺の主であり、家族を皆殺しをしたという緋陵の武神将ヨンガ=イーツェーは生きているのではないかという推測を強めていたテオン。

 蒼陵本国の危機にも関わらず、テオン達の救済に現れていた青龍は消え、謎の少女ユエの浄化の笛も手伝い、なんとか行く手を阻む罠を解いていた彼らは、ユウナとサクに邂逅した。

 だがそれを幻だと見破ったテオンにより、ユウナとサクの幻影は消えたものの、幻影が残した強い瘴気に取り囲まれたシバが、サクに怨恨をぶつけるように青龍刀をふるっていた。

 孤高のシバが抱える心の闇に瘴気は攻め入り、彼が大切にしたいと思うユウナの幻影を、サクの幻影が穢していたのだ。

 ゆえの怨恨。
 ゆえの嫉妬。

 外は鍛錬によって頑強であっても、内は繊細だったシバの歪み。

 目の当りにするテオンは、声が届かずに頭を抱える。

  


 ~倭陵国史~


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