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吼える月
第37章 鏡呪


 真実の叫びは、必ずシバに届く。
 シバなら、必ずわかってくれる。

 希望を力にするのが、人間の生き様だ。


「戦え、戦うんだよ、シバ!!」


 人間は、簡単には絶望に消え去らない。


 なぜなら――ひとは、ひとりでは生きていないから。

 自分だってそうだった。
 シバだってそうだ。

 躓(つまず)いて転んでも、叩き起こしてくれる仲間がいる。

 サクのように神獣の力を持たなくても、自分だってシバと同郷で、偉大なる父を持つ、「海吾」の仲間じゃないか。


「ちっぽけでも力がなくて絶望しても。それでも僕達には未来がある。望む未来を作るために、生きるんだ、シバ――っ!!」


 赤い瞳が、憎々しげに揺らぐ。


「こしゃくな」


 ぴぇぇぇぇぇぇぇ!!


 どこかで熊鷹の声が聞こえる。

 ひとりではないことが、なにか安心出来た。


「シバ。……目覚めろ。逃げるな!! 僕も自分と戦っているんだ。だからお前も戦うんだ、シバ!!!」


 シバの目に嗜虐的な光が過ぎる。


「辛くても、人間捨てるんじゃないよ!!」




「死ね」



 ぴぇぇぇぇぇぇぇ!!



 テオンの首に向けて、横に振られた青龍刀。


「テオンちゃん!!」


 ぴぇぇぇぇぇぇぇ!!



 仲間に殺される結末なんて、望んではいなかったけれど――。



「……ばいばい。またね」



 噴き上がる血飛沫。



 ――ころん。

 穏やかな顔をした、テオンの頭が転がった。
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