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吼える月
第37章 鏡呪
視界を赤く染めたのは、テオンの頭と小さな体。
それは静かに、命の灯火を消した。
青龍の力を持たずして、なれど、どうしても父の遺志を受け継いで青龍の祠官になりたいと、故郷の神獣青龍に夢を語っていたテオンは、その志半ばにて地に堕ちた。
同郷の仲間に首を刎ねられるという、惨劇だった――。
「あああ……ああああああ……」
まるで恐怖のように、握ったままの刀を震撼させ、恐怖とも悲しみとも判断つかない声を響かせているのは、テオンの首を落としたシバ本人。
「テオ、ン、テオ……」
両目から悔いの涙を流して、かつての友であった屍の名を呼ぶ――、青き光に包まれた彼と、
「我が食らった魂が、なぜ目覚めるのだ! ええい、消えよ!!」
屈辱の涙に変え、黒き光に包まれた彼が、青と黒が入り混ざるひとつの体で交互に叫ぶ。
「テオン、テオン、テオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオンテオン!!」
「ええい、黙れ、黙れぇぇぇぇ!!」
それは自爆寸前の暴走にも似て。
シバの手から、青龍刀がからんと地面に落ちた。
やがて――。
「うあああああああああ!!」
頭を抱えて天井を振り仰ぐシバから、ふたつの声が同時に迸る。
それは痛嘆と憤恨を織り交ぜた、手負いの獣の慟哭にも似ていた。