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吼える月
第37章 鏡呪
「はははは……」
乾いた笑いをみせるシバに、サクは怪訝な顔を向ける。
「どうしたよ。とうとうおかしくなったのか?」
「ああ、おかしくなって、オレも馬鹿になってしまったようだ。だからお前のような馬鹿に諭された気になる。オレも随分と落ちたものだと思ってな」
「……お前な。可愛くねぇ!」
シバが今、望むもの――。
――戦え、戦うんだよ、シバ!!
――ちっぽけでも力がなくて絶望しても。それでも僕達には未来がある。望む未来を作るために、生きるんだ、シバ――っ!!
『おお!? 早いな、目覚めたようだぞ』
「本当!? テオン、目が覚めたの!?」
「テオンちゃん、大丈夫!?」
シバは、サクの横を通り過ぎ、そのまま、足を止めたラクダの前に立ち、伸びをしているテオンを見た。
「な、なに!? シバ、なに!?」
かなり思い詰めたようなシバの顔に、欠伸をかみ殺す最中だったテオンの顔に怯えが走る。
そしてシバは――。
「忌まわしき血だと思っていた、このシバ=チンロン。青龍の武神将の息子として、未来の青龍の祠官……テオン殿にお仕え致したく」
テオンの前で片膝をついて、頭を下げた。