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吼える月
第37章 鏡呪
 
「……お、おい、テオン」

「なあに、お兄さん」

「青龍の力を持ったら、お前……俺達玄武組に敵対する気かよ!?」

「あはははは、そんなはずないだろう? 僕達青龍組は、玄武組にはとっても感謝しているんだし。だけど、最強の武神将だけは譲れないね。まあ、シバ次第だけど?」

 シバは凄く考え混んでいる。

「おい、シバ。考え込まなくてもいいんだよ。お前はお前らしくな……」

 そこに鼻息荒く、ラクダが参戦した。

『なにを! 緋陵にこそ最強の武神将を誕生させてみせるぞ!』

「ラックー、その前にまず民を増やさないとね。髪の毛増やすよりは、簡単だと思うけれど」

 テオンが一笑に付す。

『うぬぬぬ。我が武神将にめぼしい女はおるのだ。それからでもよかろうて』

 するとテオンは驚き、サクと顔を見合わせる。

「ラックー、この地には女どころか、人間が誰もいねぇじゃないか」

『そこにいる姫こそ、緋陵の武神将に相応しかろう』

「あ、あたし!?」

 勧誘されたユウナは、己を指さして裏返った声を出した。

『然り。重い玄武刀を軽々と振り回す力強さといい、敵を怖れぬその勇気といい。新生緋陵の武神将に……』

「「冗談じゃない」」

 母親を思い出して慌てたサクに声を被せたのは、シバだった。

 皆の視線を浴びたシバは、コホンとわざとらしい咳払いをひとつして、テオンに言った。

「あの男の後を継ぐというのは気にくわないが、最強というのは魅力ある。そうか、強い武神将のさらに強い……最強を求めてみるのもいいな。はっ、こんな馬鹿が最強になれるのなら、オレだってなれるだろう」

「シバ、お前――っ!!」

「そうよ、シバ!!」

 黒陵組からの大反対に、笑い声が起きた。


「きゃははははは!」

 ぴぇぇぇぇぇぇ!!
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