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吼える月
第37章 鏡呪
笑いの中には、シバもいた。
滅多に笑うことのないシバの破顔。
シバの再生と成長を願うテオンによって、シバは最強の武神将という、強さを求めていた己も納得出来る、新たな道標を持つことが出来た。
あれほど迷って燻っていた答えを、サクとテオンという仲間によって見つけることが出来たのがおかしくて、そしてそんな男達と共に旅をしているのが妙に嬉しくて、シバは笑わずにはいられなかった。
「シバ、笑うなって! 姫様、駄目です。シバを見ては駄目です!」
自分はまだ、サクの足元にも及んでいない。
サクと対等になれた時、自分も男として見て欲しいとユウナに言いたい。
「ところでシバ。お前は、四凶に幻とか見せられなかったか? お前がなにを見て、心を乱したのか、俺凄く気になるんだけど」
こっそりと耳打ちしてくるサクに、シバはふっと笑う。
「誰が教えるか」
どうせ、砕け散るのはわかっている。
ならば、今のような出来損ないのままで散りたくはない。
それは男の矜持。
もう二度と、魔につけいらせない。
今度こそ誰ひとり、目の前で死ぬことがないように――。