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吼える月
第37章 鏡呪
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やがて、一行は足を止めた。
足場がなくなった道の終焉で、彼らが見たのは――、一面に拡がる巨大な砂の断層。
それは迷路のように道筋がつき、ところどころ袋状の不規則な行き止まりが見える。
「アリさんの巣?」
ユウナが言うと、ユエが笑って指を指す。
「アリさんじゃないよ、ユウナちゃん。ほら見えるでしょう? あれは……蠍ちゃんだよ。蠍ちゃんのおうち」
それは、突然いなくなった大きな蠍。
それは数匹どころか、無数に蠢いているようだ。
『なんと! 我の友は、こんなところに住んでいたのか』
妙に感嘆したように言うラクダの上で、放心から戻ったテオンが呟く。
「ちょっと、待って。ここでなんで砂!? 蠍!? 僕てっきり、ヨンガが待ち受けているものと……」
「ああ、俺もだ」
サクは固い顔をして、地下まで続く断層を見る。
「なあ、蠍って……、集団生活をする生き物か?」
しかし誰も蠍の生態について知らない。
「一斉に襲いかかってきて、また戦う羽目になったら、無傷ではいられないな」
シバも強張った顔をして、蠍の動きを見張る。
『我がいて、そんなことはしないだろうて』
「あのすべてが、友好的だと言い切れるの、ラックー?」
テオンの問いに、ラクダは押し黙る。
沈黙が流れる中、サクがぼそりと言った。
「もしかすると、これがヨンガの狙いで……」
剣呑に光る黒い瞳を、警戒心に細めて。
「――緋陵の民が、突如消えた理由かもしれねぇ」