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吼える月
第37章 鏡呪
「どういうこと、サク」
時折サクは、尋常ならざらぬ直感で事実を看破する。
それを見知ればこそ、ユウナはサクの発言を重くみた。
サクは切れ長の目に、怜悧な光を運んで過ぎらせて言う。
「もしかして、消えた緋陵の民は死んだりいなくなったのではなく、ここの地下にいるんじゃねえかと。砂漠は偽装だ」
さすがにそれは、突拍子もないことのように思えて、テオンが驚いた声を出す。
「え、だったら緋陵の民は、地下で蠍と同居しているってこと!?」
どう見ても、砂の断層には人間の姿など見当たらない。
「でもサク。あんなに大きくてたくさんの蠍と共存するのって、とても危険じゃないかしら」
これは、下手すれば人間は蠍の餌になってしまう。
「それでもあいつら、ラックーには友好的でした。餌にする気があるのなら、ラックーをまず食っているでしょう」
すると他全員が、じろじろとラクダを見る。
『な、なんなのだ』
「僕が蠍なら、ラックーは食べないね。お腹壊しそうだし」
「ごめんなさい、ラックーちゃん。あたしはも、ちょっとラックーちゃんは……。お喋りしたりするのはいいけれど」
「きゃはははは。ユエも食べたくなーい」
ぴぇぇぇぇ!! ぴぇぇぇぇ!!
「……ラクダ。オレに縋った目をするな。オレだって、ひと並みの味覚はある」
『ばへぇぇぇぇ!!』
ラクダは憤慨するが、それを無視してサクは言う。
「それに蠍が。こんなに異常発生した理由を、『突然』という偶然性に頼るのもどうかと思えるんだ。……たとえばこの蠍は、ヨンガが朱雀の嘆願で生み出した、なにかの使命を帯びたものだとしたら?」
「使命だけに忠実に生きている、ということ?」
テオンが尋ねる。
「ああ」