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吼える月
第37章 鏡呪
「ところで。僕さ、この先に進むことに、凄く嫌な予感するんだよね」
ラクダの上で腕組みをしながら、テオンが言う。
「こうして皆と話していられるのが、嵐の前の静かさというか、きっと今まで以上の罠がある気がする」
「ああ、同感だ」
サクは、険しい顔をして頷いた。
だからこうして、次の一歩を踏み出すことに躊躇しているのだ。
恐らく今は、安全領域のぎりぎりのところにいるのだろう。
「それでも、行かなきゃ」
ユウナが言う。
「時間は無限にないの。ここまで皆で来られたのなら、きっと進んでいける」
そう思うしかないのだ。
「そうだね、お姉さん。なんだか、青龍も大変そうだったし、僕達も少しでも早く蒼陵に戻らなきゃ。蒼陵のためにも、玄武を目覚めさせるのが前提だけれど」
「……なぜ?」
サクが押し鎮めた声で問う。
「……金色が、ゲイが蒼陵にまた攻めてきている。ジウからも帰還するようにと……」
「早く言えよ!!」
サクが怒鳴る。
「ああ、くそ。ジウ殿や青龍の犠牲の上なのか、今の状況は。だったらもう躊躇している暇はねぇ。この先をさっさと進んで、ラックーを戻してイタ公を目覚めさせ、玄武と朱雀の力で加勢する。それが今の俺達に出来ることだ」
「ふふ、お兄さんは凄く前向きでいいね。お兄さんが言うと、一連の事象がなんでもないようなことに思える。な、シバ」
シバもテオンに賛同するように、口元で笑う。
「これで今から蒼陵に帰れとか、突き放されても困るけどさ。頼りにしているよ、白イタチ……玄武と、ラックー……から元の姿に戻った朱雀!」
『ばへぇぇぇぇぇ! 我に任せておくのだ! 同胞を攻める輩など、我が怒りの炎にて、その魂すら焼き尽くしてやるわ!』
威勢だけはいいラクダは、前足でガツガツと地を蹴り、鼻の穴を広げて揚々と宣言する。
「ああ、その姿では、些か説得性に欠けるけどな」
サクの声に、一同は明るく笑った。