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吼える月
第37章 鏡呪
やがて、シバがざっと砂利を踏み、青龍刀を握りしめながら先頭に立つ。
「先陣はオレが切る」
目の前の道は、次第に道幅を狭めて、ひと一人分の歩幅となって砂の断面に行き着く。
もしも蠍が一斉に攻めて来れば、足場がないところで戦うか、他の者達がいるここまで後退するしか道はないことになる。
しかも砂の断面へと至る道が崩れてしまえば、見ている限りにおいては深そうな地の底に落下することになる。
シバの性格からして後退はないと考えると、彼は頑として進んで突破口を切り開こうとするだろう。
それが皆から助けられたシバなりの、同時に守ろうとするテオンに向ける忠義の証なのだろうとサクは思う。
自らの体を犠牲にするしか感謝を示せられない、無骨な戦士――。
「わかった。後ろは俺が引き受ける」
恐らくそんなシバを一番にわかってやれるのは自分だろうと思いながら、サクはにかっと笑うと、シバの背をばしっと叩いて退く。
するとシバは頭をねじ曲げるようにして、笑い顔を見せた。
「……ああ」
続けて、心配そうな眼差しを向けるユウナと視線を合わせる。
シバの顔に、どこかやるせなさを秘めた覚悟めいたものが浮かび、サクは妙な胸騒ぎを感じたが、シバが背を向けたため、無言を貫くことにした。
突き詰めない方がいいと、サクの本能が判断したのだ。