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吼える月
第37章 鏡呪
「シバ、一旦引け!」
サクが叫ぶが、シバは引く気はないようだ。
「このままなら、お前の体力だけがなくなるぞ!」
シバは止まらない。
「誰が、引くか――っ!!」
どういればいい?
サクは考える。
このままなら、皆を連れて行こうとも、シバと同じく矢の標的となるだろう。サクとテオンの力があったとしても、ユウナやユエが無傷ではいられまい。
移動するとしたら、矢が止まった時だが……。
「ねぇ、どうして……矢が止まったり、放たれたりしているんだろう」
テオンが、サクの疑問を代弁する。
「少しずつ矢が止まるならまだしも、突然全部がぴたりと止まるよね。しかもそれは不定期だ。青龍殿のようになにか仕掛けがあるとは思うんだけれど、矢が止まるきっかけはなんだ!?」
シバの足元には相当の数の矢が落ちている。
飛び跳ねながら、なんとか今のところ怪我なく凌げてはいるものの、矢の勢いは止まることがないため、シバの体力次第だ。
「仕掛け……」
ひらひらと舞い続けるシバを見つめていたサクの目に、なにかが一瞬よぎり、叫んだ。
「これか! ちびっ子三人、ワシの上に乗れ!」
「ちびっ子って……僕?」
「きゃはははは。ユエもだね」
「三人って……あたし!?」
残るラクダが肩を竦める。