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吼える月
第37章 鏡呪
なんとか合流出来ると、サクが言った。
「ヨンガがいるとしたら恐らく下だ。とすれば、俺らも蠍のように中から斜め移動をしながら下に向かうか、強制的に下に行くかになるが、もしも下は下で罠がかけられていたら、足場のない状態では不利だ。だったら足場のある中に入る方が安全かもしれねぇ。シバはどう思う?」
「ああ。集団での移動だからな。蠍が大量にいるのがひっかかるが、足場さえあればなんとか出来る……というかなんとかする。ということは、一番近い横穴は少し上か下かになるが、少しでも下の方がいいだろう」
「ああ。ワシ、皆をつれて少し下に……」
『なぜ、真っ直ぐ進まぬのだ?』
ラクダは、壁を見て怪訝な顔をして言った。
「……ラックー、目でも悪くなったか? どこに道があるんだよ?」
『はて。そこに扉があるだろう。我の扉が』
「え?」
皆が目を懲らしても、あるのは岩肌のような砂の断面だけだ。
『なぜ見えぬ。そこに、赤き扉があるではないか』
ラクダが手を伸ばして、あたかも本当に扉があるかのように指し示す。
テオンが腕組みをして、唸るようにして言った。
「これはどう考えるべきだろう。ラックーに見えて僕達に見えないというの」
神獣の力を持つ者達も壁に見える場所に、神獣の力がないラクダだけが扉があると告げている。
それは、ラクダが朱雀だからと思ってもいいのだろうか。
朱雀の力もないのに?
もしもラクダが朱雀だから見えたとしたら、朱雀しか見えない扉を開くことで、どんなものが待ち受けているのだろうか。