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吼える月
第37章 鏡呪
サクは掌から水色の光を放ち、硬い砂壁を僅かに削ると、そこを足場にして立った。
サクの母、サラの遺品となった、緋陵を象徴するかのような紅の武器。
ラクダが触れた場所に、柄を握りしめた手を置いた途端、その場所から赤い光が拡がった。
『なんと!! 我が触れても反応せぬのに!!』
そんな悔しげなラクダの声は無視して、テオンとシバが慌てた声を出す。
「うわっ、シバ……この光の感覚、朱雀の――!?」
「ああ、しかも強大だ! ということは……ここが本当に、緋陵の中枢なのか!?」
血と凶夜を連想させる忌まわしき色は、どの色にも負けじと輝度を強めていき、目を瞑っても眼球が痛むほどに目映かった。
まるで、赤こそが至高の色だと告げているかのように。
それは、圧倒的な力を持つ、攻撃的な強い光――。
顔を背けても、まるで鏡に反射でもしているかのように、光は至る角度から、その存在を主張する。
そんな光の中、ぎぃぃぃと、なにかが軋んだ音をたてて開く音がした。
「扉が、開いた!?」
じゃり、と音がする。
じゃり。
じゃり。
じゃり。
それは複数の音だ。