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吼える月
第7章 帰還
彼の心知らぬからこそ、昔ながらの関係に戻れる。
ユウナの心を立ち直らせるには、極力"いつも通り"にてサクが変わらぬことを信じさせねばならない。
サクが"男"を見せれば。
リュカや金の男のように、性的な欲を昂ぶらせてその体を求めれば、ユウナはきっとサクを恐れる――。
たとえその行為の根底が、愛という……ユウナの心を求めるものであっても、リュカに裏切られた今のユウナにそれを理解させることは酷。
そしていずれ消え去る彼が、生を執着させることは……サク自身にとっても、残されるユウナにとっても苛酷だ。
だからサクはいつものように笑い続ける。
おどけて、軽口叩いて……道化者のように――。
「……やっぱり、サクといるとほっとする」
サクと共にいることが日常であったユウナにとって、サクが……誰かの日常の一部でもあることを見せつけられて寂しかった。
自分にとってサクしかいないように、サクにとっも自分しかいないと思ってくれるのが当然だと思ってしまっていたのは、それだけ玄武殿でサクとの交流が深かったためだ。