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吼える月
第7章 帰還
ユウナの世界は、玄武殿での生活がすべてだった。
時折揺籃に遊びにいっても、そこには必ずサクかハンがいて。
黒崙の屋敷にも、そこにはやはりサクやハンがいた。
サクが玄武殿に泊まらずにハンと黒崙の家に帰ることがあっても、それは必ず自分が寝た後で、目覚めた時には既にサクは傍にいたから。
ユウナにとって、サクの次に馴染み深いのは父親のハンであり、サクと同性がゆえの気安さがあるものの、サラは自分と同じ女であり、サクとは異性となる。
母親なのだから当然とは思えども、愛されているサクを思えば。そして母親を愛するサクを見れば――。
そこにあるのは、自分を弾くような世界であり、どんなにおいでおいでと招かれようと、嫉妬にも似たもやもやとした気分になるのだ。
だからこそ、自分がよく知るサクがいなくなってしまったような喪失感に居たたまれず、感情表現がますますできなくなってしまった。
気遣ってくれるサラに悪いと思いながらも。
だが、いつものように……、サクとふたりだけなら――。
いつもの調子が出てくる。
「サクがいるだけであたし……頑張れそうな気がする……」
未来は真っ暗でも、進んで行けそうに思える。
……ましてや、それがサクの願いならば。
周囲に目を光らせているサクは、ユウナの呟きを聞き逃してしまった。
「姫様、なにか言いました?」
「ううん。なんでもない」
ユウナは笑った。
――俺の中で、その可愛い顔を……ずっと俺だけに向けていてくれませんか……?
サクの腕の中が、すごく温かくて気持ちがよかった。
ずっと包まれていたいほどに。
時折揺籃に遊びにいっても、そこには必ずサクかハンがいて。
黒崙の屋敷にも、そこにはやはりサクやハンがいた。
サクが玄武殿に泊まらずにハンと黒崙の家に帰ることがあっても、それは必ず自分が寝た後で、目覚めた時には既にサクは傍にいたから。
ユウナにとって、サクの次に馴染み深いのは父親のハンであり、サクと同性がゆえの気安さがあるものの、サラは自分と同じ女であり、サクとは異性となる。
母親なのだから当然とは思えども、愛されているサクを思えば。そして母親を愛するサクを見れば――。
そこにあるのは、自分を弾くような世界であり、どんなにおいでおいでと招かれようと、嫉妬にも似たもやもやとした気分になるのだ。
だからこそ、自分がよく知るサクがいなくなってしまったような喪失感に居たたまれず、感情表現がますますできなくなってしまった。
気遣ってくれるサラに悪いと思いながらも。
だが、いつものように……、サクとふたりだけなら――。
いつもの調子が出てくる。
「サクがいるだけであたし……頑張れそうな気がする……」
未来は真っ暗でも、進んで行けそうに思える。
……ましてや、それがサクの願いならば。
周囲に目を光らせているサクは、ユウナの呟きを聞き逃してしまった。
「姫様、なにか言いました?」
「ううん。なんでもない」
ユウナは笑った。
――俺の中で、その可愛い顔を……ずっと俺だけに向けていてくれませんか……?
サクの腕の中が、すごく温かくて気持ちがよかった。
ずっと包まれていたいほどに。