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吼える月
第38章 艶宴
ヨンガの圧倒的な力の前に手も足もでなかった自分。
さらに甥であろうと容赦しない、非情さ。
相手が人ならざる者ならまだしも、彼女は同じ武神将だ。
あのラクダが真の朱雀であるのなら、まがい物の神獣の力を纏って尚も彼女は強いのだ。
青龍の力を持つシバの力を、枷という朱雀の力で押さえつけれなかったのは真なる神獣の力を行使できないからなのか、なにか別の理由があるのかはわからない。
ただ甘く見られていたおかげで、こうしてヨンガにねじ伏せられた気も力も回復した上で、拘束は解けたのだ。
それだけに、なぜあの時……サクをユウナを守れなかったのかという、荒れ狂う自己嫌悪がシバを揺るがす。
――宴に出て宴を終えることが出来れば、それ以降もサクやシバ、その他テオンやユエ、諸々の動物たちの命を保証して頂けますか。
なぜユウナが犠牲にならねばならないのだ。
初めて……護りたいと思った女に、またもや護られた弱い自分。
彼女は、庇護されるべき存在なのに。
一刻も早く、皆を救い出さねば。
ユウナが犠牲になる前に。
「ユウナに強要した宴とはなんだ」
必死の抵抗で最低限の警戒距離を保つヤグは、嘲笑う。
「宴……? それは、すぐに子種を植えつけようとする男には、理解できないものですよ」
余裕ぶって笑うものの、渾身の力で抗しているためか強張っている。
「女は崇高。女は神聖。その愛は朱雀の炎の如き熱く消えない。男とは違う、女達だけの聖なる宴。……それによりあの者は、女から愛を注がれなければ生きぬ心身になる。もう男に穢されて踏みつけにされることもなく、身も心も熱情だけに焦がされる!」
ぶわりとシバの身体から立ち上るのは、青い闘気。
それは青龍の力にも似て、非なるものだ。
「なるほど。緋陵は他国とは正反対の……女尊男卑の同性愛の国なのか。だから男は、女の欲を満たすためだけの道具か、作物の肥料となると言っていたのか……」