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吼える月
第38章 艶宴
「お前もそうなる。緋陵に入った男は例外なく。私達の国から、男は生きては戻れぬ。ましてや秘匿していたこの地下にまで行き着いた者であるのなら。お前も緋陵の礎になるしか道はないのだ」
ヤグの高笑いに、シバの口元が吊上がる。
「笑わせるな。このオレが……お前達の肥やしになど、なるものか。オレを切り落とす? オレを搾りとる? やれるものならやってみろ。オレを屈服させてみろ。……それが出来るのなら」
ヤグの渾身の力をもって拮抗していた力の均衡が崩れた。
シバは鞭を引っ張る力を強めて、難なくヤグの警戒距離に踏み込んでいく。
「オレは……認める奴にしか、平伏さない。少なくともそれは、お前ではない。死に損ないのヨンガなどでもない!」
引き寄せたヤグの喉元にシバの指が食い込み、ヤグの身体が宙に持ち上げられる。
「ぐ……っ」
ヤグの首からみしりと嫌な音が響いた時、目を覚ましたカルアがバの足を狙った。
しかしシバはそこに視線を落とすことなく、石でも蹴るような気軽さで、カルアを蹴り飛ばして壁に叩きつける。
「――もう一度だけ聞く。オレの仲間は、どこだ」
シバの闘気の青色が、色濃くなっていく。
そこに憤怒する青龍の姿を見た気がして、ヤグが悲鳴を上げた。