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吼える月
第3章 回想 ~予兆~
サクは一気にいじけて、体を丸めた。
「なんでお揃いなんだよ。しかもなんで指輪なんだよ」
「ん~。あたしがリュカに買ったのが、リュカがあたしに買ったのと同じだったの。偶然かぶっちゃって」
「偶然って凄いよね」
「ね~」
「偶然なんてあるはずないだろ!! しかも姫様の護衛役の俺に内緒で、ふたりでこっそり買い物行くなんて! いつだよ、いつふたりでこっそり!」
サクの目は、完全に潤んでいる。
「サクの贈り物買いに、サクを連れてどうするの。ほら、数日前にサクがハンに怒られて、素振り千回と警護兵全員との組手やらされた時。ハンにリュカと連れて行って貰ったの。サクのはあたしが選んだんだけど、リュカのは、ハンが指輪がいいんじゃないかって言ったから」
「僕はハン様にユウナにはこの指輪が似合うと薦められたから。大きさは違えど同じ意匠のものとは、びっくりしたけど」
「あたしも。だけど、なんでハンは同じ指輪だと教えてくれなかったんだろう。買った時、凄く笑い転げていたけれど」
「ユウナの時も? 僕の時も笑い転げてたよ、ひいひい言いながら」
俯いたサクの握られた拳に力が込められ、ふるふると震えた。
「……そうか、黒幕は親父か。またあの暇人、息子からかって遊んでるのか」
そして吼えた。
「あんのクソ親父! いつか、シメてやる!」
「お~、出来るならやってみろ、クソ息子。早く俺を打ち負かして、悠々自適の隠遁生活させてくれ」
笑いながら書庫に入ってきたのはハンだった。