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吼える月
第8章 覚悟
どうすればいい?
サクはユマの後ろで考える。
自分はどうせ死ぬ身、黒崙を救えるのならどんな迫害をも受ける覚悟はあった。
ただ――。
どうしても傷ついたユウナに、心から笑っていられる場所を与えたいのだ。
それだけが、サクにとって苦慮すべきことだった。
どうしても、こんな状態の黒崙からユウナを残して出て行きたくはなかった。無論、連れて玄武殿に行く気もない。
人情味溢れる黒崙ならば、ユウナの癒やしになると思った。
だがその黒崙の民さえ、圧をかけられれば俗物となりはてる。
押された烙印により虐げられてきたリュカだからこそ、そうした人心の動きをよく知るのだろう。
こんな状況でユウナを匿って貰えない――。
だとすれば、ユウナの安住の地を見つけるまで、どうしても捕まるわけにもいかなかった。
リュカからも、ハンからも。
「サク!」
「サク!」
「サク!」
真実を語れと迫る民衆は、いまやサクの敵。
つい先ほどまで、近衛兵を攪乱していたあの団結力は、サクを差し出しさえすればいいという、安直で無慈悲な結論に終結しようとしていた。
「サク!」
「サク!」
「サク!」
「お黙りなさいっ!!」
そこを割って入ったのは、ユウナだった。