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吼える月
第8章 覚悟

 サクの悲鳴に僅かに顔を歪めたユウナは、威厳に満ちた姫の顔で、怯えた顔で言葉を失っている民衆に向き直った。



「近衛兵が目撃した"光輝く者"とはあたしのこと。

あたしは玄武殿で、リュカに父を殺され使用人をすべて殺され……そしてリュカとその仲間の"光輝く者"に……」


「言うな……姫様、言うんじゃない!! 言わなくてもいいことだろう!?」


 掠れきった悲痛なサクの声に、ユウナはきゅっと苦しげに目を瞑り、そして言った。




「あたしは、凌辱された」



 ユウナは泣かなかった。

 代わりにサクが泣いてくれたから……。


 真実の言葉を伝えるには、真実を語るしかない。

 ユウナは覚悟したのだ。


 これ以上、サクが追いつめられる姿を見ていたくなかった。


 サクが愛する黒崙の民が、その父親が。

 サクを悪者にしようとするその状況を、黙って見てはいられなかった。


 ユマが飛び出した時、サクは必死にユウナに目で合図を送っていた。


 "姫様は、絶対来るんじゃない"


 だからこそ必死に傍観していたのだが、もう耐えられない。


 ユマの、サクを想う強さに心が張り裂けそうだった。

 サクを必死で庇うユマがとても大きく見え、見ているだけの自分がとても矮小に思えて、反吐が出てきた。


 ユマにできることが、どうして自分はできない?


 自分だって大切なサクを護りたいんだ。

 護られるだけではいたくないんだ。



 そう思った時、ユウナの覚悟は決まったのだ。

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