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吼える月
第8章 覚悟
「サクはあたしを庇っただけ。あたしが魔に穢れた存在と思わせたくなかったから、だから真実を言えなかっただけ。
あたしのために、サクが悪者になるのは許しておけない」
誰もが口を開けて、ユウナの迫力に気圧されていた。
それは生来の……支配者が持つ圧感だった。
「ハン」
ユウナは、項垂れたサクを掴んだままのハンに顔を向けた。
「……なんですか」
「長年あたしを見てきた、武神将の貴方なら……あたしが本物のユウナだということはわかるわね?」
「……えぇ。間違いなく、あんたは俺の知る姫さんだ」
「ならば結構。その目は曇ってはいないようね」
強張ったままのハンに、ユウナは微かに笑った。
「玄武殿は大勢の餓鬼に滅ぼされた。副隊長のシュウも……食べられた。あたしはお父様や皆を残して生きたくはなかった。一緒に餓鬼に食べられたかった。だけど……サクに救われて今、こうして生きている。
貴方の息子は、一切嘘をついていない。昔からなにひとつ変わっていない、貴方の自慢のサクよ。サクは命がけであたしを護ってくれたの。リュカやゲイから、あたしを……っ」
ぶわりとユウナの目から涙が零れた。
「ハンっ!! 貴方の息子は、あたしの護衛として使命をまっとうした。罪になることは一切していない。狂ってなどいるもんですか。あの異常な中で、四肢を砕かれながらもサクだけが味方で正常だった。
神獣玄武に誓って……このユウナがここで断言する」
ユウナは周りを見渡して、言い切った。
「これはリュカの奸計!! 弾劾すべきは、すべてを仕組んだリュカであり、サクに断じて非はない!!」