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吼える月
第9章 代償
「武神将になるには、神獣の種類を問わずに最低3日の適性の試練があるんだよ。それは簡単には終わらねぇ。仮にお前が最短3日でその試練に打ち勝ったとしても! 夜通し俺との儀式があんだよ! それを急いで1日で終らせたとしてもだ。そのあくる日はなにがあるかわかるか、サク!」
「武神将になるために必要なことなんて、俺知らねぇよ……」
ごつん。
また拳骨が落ちる。
「その日は、俺がリュカと約束した5日後だろうが! ぎっちぎちの強行軍で事を進めて、なんとかリュカの手から逃げられてもだ! その次の日に、お前ころっと逝っちまったら、身も蓋もねぇじゃないか! 俺なんのためにお前に武神将譲るよ!?」
「そ、そんなこと言ったって……。なぁ、契約をなかったことにすることは出来るもんなのか?」
「締結した契約を、履行の終結を待たずに強制的に白紙に戻す方法は、ふたつ。
ひとつは双方の意志を持ってなす"解除"。もうひとつは、俺らよりも高位にある人外の存在からの一方的な"破棄"。だが双方、円満に解決するのは難しいとされている。特に、高慢な魔が相手なら」
「なんで? 退路を用意されているのに?」
「どちらの方法も牙の返還を持ってなされるのは同じだが、あっちもリスクを負って契約を応じた誇りがある。そう簡単に契約のとりやめとなれば、ましてやただ働きをさせられた状態であれば、白紙に戻した契約内容がどうであれ、相応の代償を求めてくる。
解除にしても、向こうが解除に応じる相応な理由が必要だ。一番は嫌われて大喧嘩することだが、怒り狂った相手に、解除した途端まず殺されるな。
破棄の場合は、契約内容に抵触する理由……契約違反になされるものだが、あっちに騙された感が強ければ、やはり破棄された途端に殺されるだろう」