この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
吼える月
第9章 代償
 

「……結局殺されるのなら、退路なんかじゃねぇじゃないか。大体、その契約相手がどこにいるのかもわからねぇのに。ま、体の中は間違いないんだろうが。親父も何か感じているんだろう? ……俺はさっぱりだけど」


 顔も見えず、あれから一度の接触もない"なにか"。

 サクには、異種と馴染んだような感覚も、異物を抱えたような違和感も感じない。


「サク。今はどうであれ、後で失う代償が大きすぎるから、だから契約というのは、安易にするもんじゃねぇんだ。特に人間を餌にしか思ってねぇ魔とは」


「……今更だろ。仕方がない状況だったんだって。」


 口元であざけるように笑うサク。

 諦観している表情に、ハンはやり場のないため息をついて言った。


「安易にしろ安易ではないにしろ、なされた契約について、簡単に平和的になかったことにすることは、基本……不可能なんだよ」



 わざわざ絶望的なことを念を押しながらも、ハンの語気は微妙に歯切れが悪く。


 "基本"


 それが基本であるのなら、それ以外のものもあるのかと……食いついてくるように撒き餌を散らせたハンの心知らず、サクは別なことを考えていた。


「なぁ、親父。だったら武神将になるのに、そんなまどろっこしい手順踏まずにさ、もっと緊急的なものはねぇのか? ほら、リュカが祠官の心臓を食べることで祠官の……玄武の力を操れたように。武神将だって似たようなもん、あるだろ?」


 結局のところ、サクの直感は別の入り口を通ろうとも、ハンの言わんとしているところに辿り着く。

 それはハンが鍛えたきた"生存本能"のなせる業なのかもしれない。


 ハンは苦笑した。


 それは出来れば……避けて通りたい、だが唯一の"生き残れる希望"だったからだ。


/1627ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ