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吼える月
第9章 代償
「方法は――ないこともない。
そしてさらに、既契約の効力をなくす方法も、ないこともない。
ただ……お前には、かなり危険が伴う」
「……あまり推奨したくねぇって顔だな」
「……お前が、のたうち廻ることになるからな。それだけならまだいい。下手すればお前の体は、その場でちりぢりになる」
不穏な言葉に、サクは思わず目を細めた。
「基本、魔でも神獣でも契約はひとりにひとつ。それは複数を抱え込むと、ほとんどの人間の脆(もろ)すぎる肉の器が、内包した力の大きさに耐えきれずに弾け飛ぶからだ。……許容量を超えてしまう。
だが、もしそこをねじ伏せられれば――」
ハンは鋭利な眼差しをサクに向ける。
「お前の中に居る先住者を、玄武の神獣が抑えられるということが可能になるかもしれない。元々玄武は、魔を滅ぼすものだからな。
だが逆に、お前の体が魔に染まっていけば、取り入れた玄武はお前自身を攻撃する。それは契約内容とは関係なく、主を魔から護ろうとする神獣としての使命だ」
それは危険すぎる賭けだった。
サクが人外のふたつの存在に耐えられる心身であり、なおかつ魔に染まっていない清廉な心身を保っていなければならない。
今、サクに内在されているとされるものが魔であり、知らずサクがそれに汚染されているのだとしたら、玄武はサクの味方ではなく敵に回る。