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吼える月
第9章 代償
「……そういうことだ。して、サク。お前、契約してからなにか特別な力は使えるのか?」
「全然。どんな力があるのか、どう使えばいいのかなんの説明ないまま、うんともすんとも言ってこねぇよ。この痣……邪痕を見る限りにおいて、契約は今も続いているということがわかるくらいだ」
「……既契約の強みはねぇか。だが、おかしいな。なんでそいつ、沈黙を保っているんだ? だが逆に……。おとなしいからこそ、玄武の力で押さえ込める可能性は……ある、か」
「親父、そのふたつ契約を抱えるためには、最短何日だ?」
「正式な手順を踏まず、玄武の力を強制的にお前に移行するには二段階ある。まず、玄武の力をお前に注入して体に馴染ませるので半日。馴染めば、正式契約……これは半日もかからねぇ。
問題は玄武との契約に行き着くまでに、お前がどれだけの日数でふたつの"異物"を抑えきれるか、だ。
そしてお前が味わう苦痛はその間だけじゃねぇ。めでたく契約がなされたとしても、お前は常にその"異物"の反乱に危険に晒される」
サクは眉間に皺を寄せて考え込み……そしてハンを見た。
「親父、俺……それやる」
その目には、躊躇はなく。
「苦しいぞ。下手すれば……6日を待たずにお前は死ぬぞ?」
「だけど、死なない可能性もある。ならば、俺はそれに縋りたい」
「……玄武の移譲儀式は強制。玄武がお前を認めねば、お前を滅ぼすのは魔ではなく神獣かも知れねぇぞ?」
「それでも。親父も姫様も死なせないように護るためには……それしかねぇ。僅かにでも可能性があれば、現実のものにするしかねぇだろ」
「サク……」