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吼える月
第9章 代償
「俺に迷いがあるというなら。最強の武神将である親父をずっと見ていたかったなってことだ。俺にとって親父は、いつまでも敬愛すべき武神将で、俺はそんな親父を見ているのが好きだったから」
サクは悲しげに笑う。
「俺には親父ほどの器がねぇ。そんな俺が武神将なんて恐れ多いけれど、それで親父をも殺さずにすむのなら。俺、頑張ってみようかなって思う。親父に……恥をかかせねぇくらいには」
ハンはサクの頭を撫でた。
「お前は俺の自慢の息子なんだよ。……馬鹿だけど」
「馬鹿だけ余計だって」
「否定出来る要素があるのか」
「……うるせぇよ。親父似なんだよ」
そして父子は堅い顔を見合わせて、頷き合った。
「親父。ジウ殿のところは延期だ。今晩からでも始めたい」
「わかった。だけど晩餐は出ろ。折角の再会なんだ。酒でも酌み交わそう」
「ん……」
「それからな、サク」
「なんだ?」
「武神将は……決して誉れあるものではねぇぞ」
「え?」
「お前に話しておきたい――。
なぜリュカが、こんな裏切りをしてまで憎悪をしているのか」
サクは面持ちを厳しくさせた。
「リュカに烙印をつけたのは――
――俺達武神将だ」