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吼える月
第9章 代償
「リュカの怨恨の発端は、俺にある――。
命令とはいえ、正義心に反して……ただ髪色が違うというだけで"異端者"だと追いつめ、暴圧して殺したんだ。……倭陵の未来のためと言い聞かせて」
「親父が、リュカを警戒していたのは……」
「ああ。あの凄惨な場を体感していて、助けられた恩義に報いるためにと愛国心を掲げられるものなのかと、疑問だったからだ。
だがお前や姫さんと一緒にいるリュカは楽しそうだったから、俺の取り越し苦労で終ってくれればと、願っていたのだが……」
「………」
「祠官は夫人が亡くなってから、リュカだけの声しか聞かなくなった。そして俺は遠ざけられた。
遠征だの餓鬼討伐だのという名目で、俺を昨夜玄武殿に戻そうとしなかったのはリュカの意向だろう。リュカにとって俺の存在は邪魔だったんだ」
「……ゲイっていうのは何者なんだろう」
「俺が見た洞穴に、ひとが隠れ住んでいた形跡があった。それも質素な隠遁生活ではなく、王族のように華やかだった。
なぁ、サク。ゲイっていうのは……長い金髪をしているか?」
「ああ、そうだけど?」
「そこの中に、残っていたのは長い金髪だった。……リュカはよく玄武殿を抜け出す癖があった。もしかすると……」
「リュカがゲイをそこで匿い、蜂起の時期を見計らっていた、と」
「その方がしっくりくる」