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吼える月
第9章 代償
このままだと、マヤが派手に転んで大惨事となる――。
「マヤ様、そうだわ。丁度今、一家を夕餉にご招待に参ったんですが、うちで使用人達への労(ねぎら)いのおにぎり作りましょう! だからお茶は使用人にまかせて。それがいいわ!」
とにかく使用人達からしばらく離した方がいい。
身重を5回も経験しているくせに、マヤには危機感が全くない。
おにぎりなら座って作れるから、危ない目には合わないはずだ。
「まぁ! お手伝いさせて貰えるの!? 使用人の労いおにぎり、なんて妙案なんでしょう! さすがはサラ!
しかも夕餉もご馳走になれるなんて! サラ、色々お話しましょう? ああ、主人にも伝えなくちゃ。ええとユマにも……あっ!」
「あっ!」
またもやふらつくマヤをサラは抱き留め、彼女を動かすのは危険だと判断したサラは、マヤを近くの応接間の椅子に座らせ、手にしていた茶を飲んでいるようにと念を押すと、猛速度で……丁度上着を取りに戻った街長にこの旨を説明し、ハン達がいるはずの控えの間に行った。
だが彼らの姿はなく。
行き違いになったのかも知れないと思うサラは、ユマの部屋に赴いた。
「俺は――っ!!」
この声はタイラだ。
「姫に庇われるような、あんな情けないサクのよさなんてわからねぇよ! なんで、なんでお前がそんなことを!!」
息子を貶されたサラはむっとした顔つきをして、締まっている戸を拳でたたき割るかのように荒く叩いて叫んだ。
「ユマ!! "姫に庇われるような、あんな情けないサク"の母親よ。夕餉には街長と夫人と弟達とで食べに来て。だけどその前に、マヤ様と一緒にこの家の使用人用のおにぎり作りを手伝って欲しいから、お母様とすぐウチに来てくれる!?」