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吼える月
第9章 代償
「……ユマはどこ?」
飛び出してみたはいいけれど、ユマの姿が見えない。
ユマがどこに赴くのかすぐに思い浮かべられるほど、ユウナはユマのことを知っているわけではなく、黒崙の地形を知るわけでもなく。
自分が追跡役となるのは、無謀だったかもしれない。
だけどサクに拒まれたユマが見たのは自分だったから。
……呼応するように、体が動いたのだ。
「家に戻ったのかしら?」
とりあえず街長宅へと向かうが、篝火を焚いて立っている門番は、ユマの姿は見ていないと頭を横に振る。
街長宅には、主なくとも煌煌とした明かりが中庭らしき場所から漏れており、人々の議論する声が乱れ飛んでいた。
そう簡単に、愛着ある故郷は捨てられないのだろうと、ユウナは唇を噛みしめる。自分ですら、玄武殿と共に滅ぼうと思っていたのだから。
他人の命令ではひとの心は動かない。
自らの心が納得しなければ――。
罪もなき人々を巻き込んでしまっている自分。
自分が生きようとすれば、多くが犠牲になっている現実……。
「今は……ユマを探す方を優先的に考えなきゃ!」
ユウナ街長宅から離れ、ユマの名前を呼んで探し続けたが、がらんとした街の中で返事をするものも、知恵を授けてくれるものもおらず、しかもあたりは黒くなってきて、探索環境は最悪だった。