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吼える月
第10章 脆弱
「ああ。街長の街の紋章を持ち出してまで信憑性出して俺を売ろうとしたところを、"裏切り者を召し捕ったり"とそいつらがわざわざ連れてきたんだ。でタイラは、ここに来た時は既にあんな状態。
タイラがあいつらを、中央の貴族かなにかと勘違いして、報奨金でも巻上げようと近づいたのが運の尽きだな。もしもタイラが話したのが違う奴だったら、俺……今頃どうなっていたことやら。タイラのあの姿は、複雑なんだよな……」
「タイラが……なんでまた……。もしや……ユマを手に入れようとして?」
「……真実はわからねぇ。本人はあんな状態だからな。ま、そんなことより。親父、あいつらは誰だったんだ?」
サクの質問に、ハンは顰めっ面で答えた。
「……俺の見立てが正しければ、倭陵随一の識者集団に属する者だ」
「はあ!? 誰だよ、それ!?」
「他言無用と念を押されている以上、相手が息子であろうとそれ以上は俺の口からは言えねぇ。お前が自分で真実に到達しろ」
「そんなこと言ったって……そこまで言ったなら突き放すよ。なぁ、お袋」
「ハン、倭陵随一の識者集団……もしかして"彼ら"!?」
「多分、な」
「なんで見てもねぇお袋には、話が通じてんだよ!」
「ちょっとお黙りなさい、サク。ハン、なんでまた……。だって"彼ら"は今まで人前になど出たことがなく、実際いるのかどうかもわからないとされている人達じゃ……」
「それが居たんだよ、"お嬢様"を連れて女ふたり連れで」
"女ふたり連れ"
「待て待て、親父。男ひとりにチビ女ひとりの間違いだろう?」
「なんだ、本気でお前……男だと思ってたのか? あいつ……女だぞ?」
「はああああ!?」
「女だからこそ、姫さんを眠らせるしか方法がなかった。そして俺達が男だからこそ、姫さんをサラを通じて戻したんだ、呪詛を解けと」
なにが"だからこそ"なのか、サクの頭は理解に追いつかない。
サクの頭の中にあるのは、あの馬上の男……もとい女の、盛り上がった……想像上の胸。
「……ありえねぇ……」
……違和感だ。明らかにその部分だけ、異質過ぎる物体だ。