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吼える月
第10章 脆弱
  

「本当に"彼ら"なの? 口車に丸め込まれてはいない?」

「本物だと思う。俺がしようとしていることは既知の上、俺達の敵ではないと前置きしてきた。

……なにより、俺の玄武の血が特殊なあのふたりに震えていた。あの特異な空気からして、只者ではねぇ。それに隠れていたサクを、あんなチビなお嬢様ですら一発で見抜いていた。素人のはずはねぇよ」

「はぁ……こんな時にとは思うけれど、私も見たかったわぁ……」



「なんだよ、結局正体わからねぇのは俺だけかよ、畜生っ!!」


 そんなサクの地団駄も、訳知り顔の両親には通じず。


「"彼ら"の提言だからこそ、信憑性がある。

ならばこそ……直面している問題は、厄介だった」


 ハンはサクとサラを見た。


「穢禍術と呼ばれる、倭陵では禁忌とされている強力な術がある。

それが姫さんにかけられた呪詛の正体だ」


 ハンは硬い顔で語り出した。


「それは魔に穢れた者だけが行える、性交によって威力を発揮出来るとされている邪道の術。

魔に穢れていればいるほど術の威力を増し、さらに姫さんの場合は二度重ねてかけられたらしい」


――死ねぬ呪いをかけてやる。


「しかも悪いことに、神獣が力を貸した男が術者ときてる。聖邪混在した穢禍術――、実に面倒でかつ強力な術と成り果てた」



――苦しめ、ユウナ。


 サクはこくりと唾を飲んでから訊いた。


「その術者とは……リュカ、か?」

「そうだ」


 その返答に、サクは舌打ちした。



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