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吼える月
第10章 脆弱
「挿入……って、親父……簡単に言うけど、それってさ……」
サクは顔を引き攣らせすぎて、うまく口が動かないようだ。
そんな息子を見ながら、ハンは難しい顔で話を続けた。
「……サク、これはしっかりとした術なんだ。穢禍術自体、性交によってもたらされるもの。性交によって生じる力はより強いものなんだ。禁忌ではないが、房中術と言われる術の類いがその性交時の力を術に転じたもの。
いいか、僅かな間で相殺を可能にするには、こちらも性交の力を利用するしかない。姫さんの……その、より体の中に続く膣内から術をかけ続け、姫さんの胎内で呪詛の大きさを推し量り、それと同等の力でもって相殺して……」
「小難しいことはいらねぇよ。俺、頭くらくらして理解できねぇよ。姫様を抱く……挿入って……。冗談だろ……姫様は…色街の女とは違うんだぞ。ましてや、恋人でもねぇのに姫様を抱くなんて……はは、ははは……」
サクは泣きそうな顔で、空笑いを始めた。
「あの金色野郎となにが違うってんだよ!!」
「凌辱ではない、これは術だ!」
「姫様の意志を無視なら、同じだろうが!! むしろ、あの時の方が、俺を助けようとして姫様は合意をしていた。それよりタチ悪ぃじゃねぇかよ!!」
「だがそれしか、穢禍術をかけられた姫さんを救う方法がねぇんだ」
「は、はは……。姫様が……"男"を怖がるじゃねぇかよ。"男"対象外の俺も……恐怖の対象に……されちまうじゃないか!!」
「サク。この鎮呪に"男"の情は、切り捨てないと駄目だ」
「……あ?」
サクは力ない顔でハンを見る。
「ああもう、小難しい理由は抜きに、サクにわかるように端的に言うぞ。
即ち――、恋愛感情抜きに事務的に姫さんを抱き、なおかつ精を放たず寸止めで耐えて、だが姫さんだけをナカでイカせないといけねぇ。それを術を施しながらやるのが絶対条件だ。
交わっている間は、こっちの身も呪詛にあてられている。そこに無防備になりやすい恋愛感情などに囚われ肉欲に走れば、あるいは精を放って無防備な姿をさらせば、逆に姫さんの呪詛に取り込まれる危険性が出てくる。……男にとっては、命がけの術なんだ」