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吼える月
第10章 脆弱
 

「私は大丈夫。これは仕方が無いってわかる……もの……。私、姫様を……助けたい……もの。だから……」


 女としての感情を捨てようと、サラは泣きそうな顔で笑い……そして最後には声を震わせ、俯いてしまった。


 ハンは切なそうに顔を歪め、サラを胸に抱くと、その頭に唇を落とした。


「ああ、浮気じゃねぇ。俺が愛しているのは、お前だけだからな」


 それを見たサクが、意を決して口を開こうとした時だった――。





「ユマ――っ!!」




 街の入り口近くで、街長の叫び声が聞こえたのは。




「生きて……生きていただけで私は――っ」




 そこに居たのは、号泣している街長。

 彼が抱きしめているのは――。



「ユマ!?」



 それはユマではあった。


 だが服は破られており、ところどころ肌は露出し……月明かりを浴びてユマは……淫靡に乱れた有様だった。


 一目で何があったのかわかるその具合。


 ユマとサクの視線が合った。



「サク、サク――っ!!」


 ユマがサクを見つけて、手を伸ばしながらその場に泣き崩れた。


「ユマ!!」


 そのユマの元に、悲痛な表情でサクは駆け付けた。



「私、私、私――っ、近衛兵に……姫様と間違われてっ!! 姫様じゃないって言っているのに、姫様は色狂いして男を誘いまくるから、だからなにをしてもいいんだって、沢山の兵士達に……無理矢理っ!!」



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