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吼える月
第11章 儀式
 

 話では、サクが玄武の力に馴染んだ後、二度目の儀式をハンと執り行い、そこで武神将の移譲が完全に終了する。 


 だから今、サクは武神将でもなく。

 力の多くをサクに授けているハンもまた、武神将とは言えぬ。


 ただその中で今、確たるものがあるとすれば、サクは玄武の武神将になる器があったということ。

 あれだけ外見が変貌するほどの、どんな試練を体験したのかわからないけれど、サクはこれだけの短期間でとりあえず第一関門は突破したのだ。


 それをサラは素直に褒め称え、そして誇らしい気になった。


 そんな息子が安心しろというのなら、安心しよう。

 息子は、父親同様……いやそれを超える武神将になるのだ。

 今、現在も……それに向かっている――。



「頑張るのよ――っ!!」


 サクからの返事を聞かずに、サラは袖を捲って部屋を飛び出した。


 息子が姫を抱く――。


 姫を助けるためとはいえ、母親としては複雑な心境だったけれど。


 だが頼もしくなったサクなら。

 あれだけいい男になったサクなら。


 以前には見えなかった、サクの行き場のない想いの出口が見つかるかもしれないと、サラの心は躍った。


 早くハンとこの悦びを分かち合いたかった。


 さすがは自分達の息子だと。

 
「ハン――っ!! ネズミをたくさん採るわよっ!!」



 親は子に従うのみ。

 子供のために尽力すべし。



「よくわからないけど、サクを支えているらしい、"イタ公"ちゃんをご機嫌にさせましょうね!!」




 そしてサラは――


「!!!!!」



 異変を感じたのだった。

 内から鍵がしまっているはずの戸が開いていたことに。
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