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吼える月
第11章 儀式
「ほら、昨夜……ユマがその近衛兵に犯されて帰ってきただろ!?」
サカキの声が、詰るように大きくなった。
「犯す……? そんなことをしたのか?」
リュカは不快そうに顔を歪めて、後ろの近衛兵を見た。
「いや、その……だから!! 姫と名乗る色狂いの女が自ら誘ったんだ」
皆は口々に言う。
「なあ兵隊さんよ。あんたら臨時で雇われた奴らだろ。だったら知らねぇだろうけど、うちの国の姫ってのは、魅惑的な美貌はもっちゃいるが、男を誘うだけの色気も経験値もねぇんだわ。
なにせ嫁入り前、初々しいままそこのリュカ様に嫁ごうとしてた上に、なんといっても男勝り。そこの武神将に稽古つけて貰ってたほどだからな。そんな……娼婦みてぇな女性じゃないんだわ。な、リュカ様、ハン」
それは別人と言わんばかりの物言いだった。
「だけど……姫だと言ったんだ、自分で!!」
「だったら、たとえばそこのサラが遠征ばかりのハンに欲求不満になって、自分は姫だと誘ってきたら、それを信じるのか? サラも大層美人だぞ?」
「やだわぁ、サカキったら。それにうちは欲求不満知らずよ。ハンはいつもも凄いのに、遠征前後には、それはもう腰がたたないくらいに……」
「姫はそんなに年食ってないことくらい、俺達にもわかる」
「今、私の言葉を遮った不届き者は誰!? しめてやる!!」
不穏な空気を纏うサラを、ハンが窘(たしな)めた。
「ご主人。そのユマという娘は……どんな女性で」
リュカは厳しい面持ちで尋ねた。
「ああ、姫様にそっくりな街長の娘だよ。サクと結婚が決まりそうだったのに、そこにつけこんだウチの馬鹿が、おかしなものを贈るから!!」
リュカは、街の民の駆除によって流れが途絶え始めたネズミの群れを易々と乗り越えてくると、その指輪を手に取ってみた。
「ああ、つけない方がいいですよ。それをつけたらユマは色に狂い、外したらいつものユマになるんです」
それはサカキの嘘八百。
わかりながら黙るのは、ハンとサラ。
「ユマ……。確かユウナに聞かれた、サクの噂の相手ってそんな名前で、ユウナと同じ顔だと聞いたことがある……。凄い噂だったから……」
リュカはなにかを思い出すように、目を細めた。