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吼える月
第4章 回想 ~崩壊~
ユウナにいじられれば、今でも途端に幼くいじけてしまいがちなサクではあるが、彼女が知らぬところでサクは、18歳とは思えぬ貫禄を見せることを、リュカは知っていた。
ハンが倭陵を飛び回っていられるのも、サクが警備隊長代理としてきちんと荒くれた兵士をまとめ上げられることをわかっているからで、その任をこなしつつ、ユウナの護衛もできているのは、ひとえにサクの人望と実力。
リュカは、サク共に16歳を過ぎた頃の、ユウナの13歳の誕生会が開かれた夜を思い出した。
あれは煌煌とした、金色の満月が眩しい夜だった。
屋敷の内外ユウナの祝賀ムードで、祠官もハンも文官も武官も、無礼講として大いに酔っていたその時、山賊に攻められたのだ。
鉄壁のはずの外壁に這い上る輩達。
外壁の向こう側にある山の高い位置からは、大量の火弓。
異変に真っ先に気づいたのは、静寂すぎることを奇妙に思ったサクだった。
――見張り台が燃えている。敵襲だっ!
強固な護りを誇る玄武殿とはいえ、内にいる要の者達は酒に溺れており、動けるのはユウナの部屋で遊んでいた、サクとリュカだけだった。
――どうしよう、ぇどうしよう!!
――んだよ、使えねぇ親父はっ!
――サク、僕達でなんとかしよう!
不安がるユウナを護るために、若干16歳のふたりは立ち上がった。
――サク。昨日までは大雨で地盤が緩んでいるはずだ。僕が外で待機している者達の半分は、屋敷裏の崖に誘い込もう。僕は馬ぐらいは乗れる。
天候地形から、荒くれ共を討とうとするリュカと、
――だったら俺は、頭領を狙う。こっちは数が少ねぇんだ。中に侵入される前に上の首獲り、戦意を喪失させる。恐らく表門の一番いいところでふんぞり返っているだろう。
武術で敵を散らそうとするサク。
――サク!? あの頭領はハンですらずっと捕まえ損ねている奴よ!? 正面から乗り込んでうまくいくはずないじゃない。
そしてユウナは――。
――いい案が浮かんだ。あたしが囮になる。
――姫様なにを!?
――そうだ、ユウナ!!
――あたしはこの国の姫よ。武術だって囓っている。国の一大事に指を咥えて見ていることは出来ないわ。それにサク。あたしが頭領を惹き付ければ、サクなら一撃で討ち取れるでしょう?