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吼える月
第11章 儀式
さすがに、サカキも狼狽して口ごもる。
呪いのせいにしてこの場を収めようとしたサカキとて、兵士達が見た女がユマかどうかの確証もなかった。
ただの出任せを、知った顔でつらつらと喋って押し通そうとしていただけだ。
昨夜街長宅に帰ってから、ユマの姿は見ていない。
恐らくユマは街長宅の私室に閉じ籠もっているのだろうが、今、街長宅を兵士達に踏み込まれてはいけない理由がサカキにはあった。
街長宅から注視を遠ざけようとすれば、この場にユマを引き摺ってくるしかない。だがユマは、果たしてこちらの思惑通りに、指輪を嵌めて娼婦まがいの痴態を演じてくれるだろうか。
……サクにあれだけきっぱりと拒まれた今、それをする理由がユマにはないのだから。サクに恩を売れるとしても、それは自業自得であり、ユウナを貶(おとし)められたサクが、ユマにはたして心を動かすかどうか。
仮にこの異様な空気を察して、色狂いを演じてくれたとしても、それによってサクとユウナが引き離されることはなく。逆に演じた自分の方が、踊らされた兵士達により、侮辱したことの報復を受けるかもしれないのだ。
そこまでを見通せないほど、愚かしい少女ではない。
だがユマの即演がなければ、この場は収らないほどに兵士達の気は昂ぶり始め、それをリュカも制する気もなさそうだ。
姫とそっくりなユマを連れて来ねば、強制探索でも始まりそうな気配。
探索でもされれば、すべては……ここで滅ぶ。
サカキは握った拳に力を入れた。
どうすればいい――?
そんな時だった。
「ふう、もう隠し通せないわね」
突然サラがため息をついたのは。
そして彼女は近衛兵に聞いた。
「この中で、おたずねもののサクを見たことがある人は」
何人かが手を上げた。
「じゃあその人達と、昨夜その姫様を相手にしたという人達、私についてきて。そしてリュカ様も」
「サラ?」
ハンが訝しげに見た。
「もう隠し通せないでしょう、ハン、サカキ。見せてあげましょうよ。その呪いの指輪をつけたユマが、男を淫らに相手をする姿を」