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吼える月
第12章 心願
――俺はここにいます。
違う、貴方はあたしの知るサクじゃない。
ねぇ、サクをどこに隠したの!?
あどけない笑いを見せて、屈託なく笑うあのサクは。
拗ねたり怒ったり、感情豊かなあたしの大好きな幼なじみは。
あたしをいつも護ってくれる、とっても強い護衛役は。
ああ、サクは――
……いないんだ。
あたしがサクを切り捨てたんだ。
もうサクに会うことは出来ないんだ。
サクは、あたしのいないところで幸せになるんだから。
――そうだ、この世界は虚構。
あたしの心願が作った心象光景。
サクは、現実のサクは……。
サクは……。
アタシハマダ、ナニモシテイナイジャナイカ。
――姫様……俺の声が聞こえていますね?
あたしは、なにをしているの。
どうしてこんなところに逃げているの。
どうして現実世界で闘わないの。
サクを。
サクを護りたいから。
だからサクを自由にしたんでしょう?
あれだけ胸を抉られる思いで、手紙を書き残したんでしょう?
思い出せ。
あたしはなにをしようとしていたのか。
アタシニハヤルベキコトガアル。