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吼える月
第12章 心願
――姫様……俺を感じて下さい。痛みではなく、俺の熱を……。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い……。
ああ、なにか温かいものが流れ込んでくる。
――痛みより、俺を選んで……ください。
痛いけど、とっても痛いけど……。
気持ちいい……。
サクに包まれているようで、あたしはひとりじゃないって安心する。
信じてみようか。
サクのいる現実世界に帰るために、この声に従ってみようか。
サクの熱と感触を持つ、この艶めいた声に。
――姫様、俺の方が……痛みよりもいいでしょう? だったら……俺に集中して。俺の……口づけを感じて。
ああ、サク――。
気持ちいいの……。
――苦痛に耐えられたらのご褒美の"治療"です。だから、頑張って……。
これ以上の気持ちいいことがあるの?
だけどあたしひとり、そんな恩恵を受けるわけにはいかない。
サクが。
サクが気持ちよくならないと。
あたし自身ではなく、サクを幸せにしたいから。
――……たとえそれが"治療"でも、たとえそこに愛がなくとも、俺にとっては……僭越すぎる、僥倖です。
サクが幸せになれるのなら――。
タトエソコニ、アイガナクテモ。
"治療"が、サクの苦しみを和らぐことが出来ますように。