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吼える月
第12章 心願
  

 ずきずき痛む体。

 痛みは確かにまだある。


 だがそれ以上に、今まで以上の美貌をさらして、"男"を強烈に意識させてくるサクにこうして愛撫されることが、倒錯的でたまらなかった。


 与えられる快感がすべての思考を支配する。


 以前のような"洗浄"のように、サクには目的があってこうしていると頭は理解出来るのに、体がそれ以上の理由での睦み合いを渇望していた。


 いまだなにも状況が掴めていないというのに、切り捨てたはずサクが傍に居てくれる……それだけに満足出来ない自分は、こうされる行為にもっと滾るような熱情が欲しいと願う自分は、なんと我が儘なのか。



 胸を口淫するサクの頭を撫でたい。

 その長い髪に指を入れたい。


 もっと息づくサクを感じたい。


 だけど……繋いだ手を離したくはなくて、煩悶する。



「姫様……随分と物欲しげな顔で、俺を煽って見てくれてますね?」


 サクが妖艶な眼差しでこちらを見ていた。


「これだけじゃ……まだ足りないんですか? はしたない姫様だ」


 自分を姫様と呼ぶくせに、どこか意地悪な表情で、わざと淫らなことを見せつけ、ただの女なのだということだけを意識させようとする。


 どこまでも、自分は"男"だということを主張して。


「ここをこうするのは……俺だけですからね。ん……っ」


 うっとりとした顔で、サクは熱心に両側の蕾を交互に攻める。

 蕾をもぎ取ろうとしているかのように唇で挟み、摘まみ上げるようにして引っ張ったかと思えば、焦らすように乳輪を舌でなぞり、突然横からカプリと強く吸い付いてくる。


 それは嬲って遊ぶというよりも、ユウナの蕾が愛おしくてたまらないということを訴える、口全体の愛撫だった。

 
「おいしい……。やみつきになりそうです」


 うっとりとした声を放ちこちらを見ながら、今度は長く伸ばした舌先をくねくねと動かし、蕾を小刻みに揺らす。


 サクの淫猥な舌の動きは、見ているだけでぞくぞくとした興奮を呼び覚ます。蕾を刺激される度に、秘部になにかがじゅわっと溢れてくる。

 形にならないもどかしい痺れが体に走り、熱い息が零れ落ちた。



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