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吼える月
第12章 心願
 

 以前に増して、艶めいた美貌の男になっていたサク。

 そんなに熱っぽい瞳を向けられれば、ユウナの気が変になりそうだ。


 サクの"男"に、どきどきが止らない。


 自分は……このまま頻脈が昂じて死んでしまうのだろうか。
 


 死に絶えるのならば、願わくば――。


 その逞しい両腕で。

 サクの腕の中で逝きたい。


 サクの熱さを感じて、サクの匂いを感じて。

 自分がいない世界で幸せになるサクを見る前に、このもどかしいほどの気持ちいい中で、サクだけしかいない世界で死に絶えられたら……なんて幸せだろう。


 だけど、サクを幸せにするために……やらねばならないことがある。


 そう思えども、サクから与えられる快感がもっと欲しいと思ってしまう。

 サクをもっと感じたいと思ってしまう。

 
 欲情。


 サクを男として意識しているだけではなく、欲情している自分を感じて、ユウナは戸惑った。


 淫らになってしまった自分。

 この浅ましさ。恥ずかしい……。


 こんな自分をサクに見られたくない……。

 だけどサクだから見せられる……。


 そんな時バタンと大きな音がして、ユウナはびくりと体を震わせた。

 サクの唇が胸から外れ、険しい顔をその音がした方に見つめた。


「……ちっ、邪魔が……入ったか。さっさとやれということか? 愉しむ時間ぐらいくれよな……」

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