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吼える月
第12章 心願
「姫様……両手は俺の首の後ろに回して。そして……辛かったら、俺の肩を噛んで下さい。がぶりと……歯形をつけて下さい」
従順なユウナの手が首に回される。
ここから先――。
きっとユウナに押し入る自分は、正気のユウナにとっては、忌むべき"男"となりえる。これは"洗浄"とは違う。なんの申し開きも通用しない。
もう後には引けない。
ユウナを救い、傍に居るためには……自分が恋い焦がれた黒い瞳のユウナを、愛でもって抱くことは叶わない。治療しかできない。
それでもユウナを護りたいから――。
逡巡は、やがて覚悟になる。
可愛い姫様。
愛おしくて仕方が無い姫様。
一目で囚われた、あの黒い瞳のユウナを抱きたかった……。
苦しくてたまらない恋を実らせて、想いを分かち合ってみたかった。
ユウナが選んだ男は自分ではない。
ユウナが抱かれようとしていた男は自分ではない。
それでも――。
「ごめんなさい……姫様。それでも俺は……この治療役を、他の誰にも譲るわけにはいかないんです」
少しでも、ユウナにとって"男"としての自分の痕跡を残したい……その欲望こそが正直な心。
主従ではなく、友人でもなく……ただの男と女として、体だけでも愛し合ったその痕跡を、少しでもユウナに刻みつけることが出来たのなら。
……たとえ、そこに愛がなくとも、幸せな時間は刹那に終るとしても。
その後、苦しみが長く続くとしても。
それでも、たとえひとときでも――
ただの男としてただの女のユウナを独占できるのならば。
それは僥倖。
この想い……潜めていよう。
ユウナの後頭部を手で撫で、サクは……屹立する己自身を、ユウナの蜜で溢れかえった熱い花園にまぶした。
「ん……」
その感触に、ユウナの唇が半開きになる。
それを見て、サクは切なげに微笑んだ。
ここから先、禁じられるのなら――
今だけは素直に伝えたい。
「姫様……愛してます」
この言葉が、ユウナの記憶に残らなくても。
サクの目から一筋の涙が零れ……そしてサクは雄々しい分身を、前に抱くユウナの蜜壷に下から押し込んだ。