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吼える月
第12章 心願
「姫様……感じますか? 俺……姫様のナカにいるんです」
感極まったような、泣いているようにも聞こえるサクの声が響き渡る。
「ん……」
ユウナの表情に、女の艶と苦悶の色が入り混ざる。
「姫様、俺を見て」
「ん……」
返事をしているのか喘ぎなのか、判別つかぬ悩ましげな声を漏らすユウナは、気怠げにサクを見た。
それは――気持ちがいいというような、蕩けたような恍惚の表情。
自分に感じてくれているのだと悟ったサクは、嬉しそうに顔を綻ばせ、ユウナの長い髪を指で絡め取ると、愛しげに口づけた。
唇に口づけたい欲を必死に堪えて。
サクは、動き出そうとはしなかった。
言葉に出せない愛おしさを熱の滾る眼差しで伝え、ユウナの表情の全てを記憶に刻み込もうと、切ない顔で見つめる。
それに僅かにユウナは目を細め、熱い吐息をひとつ返した。
ここにいるのは男と女――。
欲情して繋がったふたりの艶は、互いの艶に煽られ相乗的に拡がり、噎せ返るような熱気と化していた。
結合されたままの場所は溶けるように熱く、動き出す目覚めの時を待っているかのように、ただどくどくと脈打つのみ。
やがて――。
絞り出したような声を出したのはサクだった。
「俺……姫様と……」
そしてサクは上気した顔でうっとりとした表情にて目をつむると、そのままくっと喉もとをユウナにさらすようにして、天井を振り仰ぐ。
「……ああ、俺……姫様と……」
熱く柔らかく――。
サクを愛でるように包む膣襞の感触は、鳥肌が立つほどに気持ち良く。
呪詛の相殺作業を必死に続けていても、……いや、続けていたからこそ。
両極にある僥倖に与れたのが、どこか夢見心地で信じられなかった……結合した瞬間。夢なら終らせぬものかと、時を進めたくなかったこの瞬間。
時間が経っても変わらぬ現実だと実感出来たサクは、ようやく……耐えきれないというように歓喜に顔を歪め、心で叫んだ。
ユウナと、ひとつに……なれたんだ――……。