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吼える月
第12章 心願
「ああ、わかったわかった。じゃあな」
『まったく、素っ気ない小僧じゃ。またネズミでも食いに……』
「待て――っ!!」
「ひゃあああんっ」
「姫様じゃねぇです。そこの四つん這いを忘れて二本足で出て行こうとしているイタ公だ。待て、戻ってこい!!」
面倒臭そうにそれは戻ってくる。
「今……なんて言った」
『ネズミでも食いに……』
「違うその前だ。……誰が……来てるって?」
『リュカという名前の男。兵士を連れておる』
サクの目に、剣呑さを通り越してぶわりと殺気が灯った。
「リュカが……兵と共に来てるって……!? 姫様を……こんなにした、リュカが親父との約束前に来てるって!?」
「リュ……カ……? ……リュ……カ、リュカ……」
「姫様?」
なにかユウナの様子がおかしいと、サクは抽送をやめてユウナの顔を覗き込んだ。
それまで紫の瞳に浮かんでいた、快楽に耽溺する情動は見られず。
「姫様、しっかりして下さい。姫様――っ!?」
身を固まらせて、突然小刻みに震えだした。
全身の肌が鳥肌となり、がちがちと歯を鳴らせて。
「あ、ああ……」
再生した恐怖に、ユウナは瞬時に凍り付いていく。
そしてそれはユウナの内から壊す痛みとなり、縦横無尽に暴れていく。
「痛い……、痛い……っ、痛い、痛い、痛いっ」
サクの目が見開かれた。
結合部分から、痛みの呪詛が逆流してくる。
「やばい。リュカという名前が引き金となった。くそっ、呪詛も暴走して、俺にも……くっ!!」
サクは苦しげに声を上げた。
逆流しているからといって、サクがその痛みを受容していれば、ユウナの痛みが消え去るわけではないが、肉棒を引き抜けば、ユウナの呪詛を鎮める相殺が出来ない。
呪詛が鎮まるまで、ユウナの胎内にて痛みに耐えて呪詛の反撃を凌ぐしかないのだ。
サクはぶるぶると震えながら、痛みに声を上げるユウナを抱きしめた。
消えかけていた邪痕がまた色濃くなっていた。
このままでは、振り出しに戻ってしまう。
「ああ、早く、早く姫様を治療しないと……。姫様、姫様……俺を感じて。姫様俺を……」
「ああああ、嫌、お父様あああ」
「……ちっ、錯乱してるのか。姫様、俺の声を、姫様っ!?」