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吼える月
第12章 心願
そんな中、女が顔を上げて兵士達を見た。
誘惑するような挑発的な眼差し。
超然とした光を妖しく揺らし、わざとうっとりとした表情で流し目を送ると、交差させた足に断続的に力を入れるようにして、男を随まで搾り取ろうと攻撃する様を見せつけた。
そして彼女は、兵士達を見ながら舌舐めずりをする。
それは、貪欲な捕食者の顔――。
その顔がふと表情をなくすのと同時に、男の背中がぴくりと震えた。
近づくものがいた――。
それまでサラと入口にて男女の嬌態を見ていた男が、憮然たる表情にてツカツカと中に入ってきて……女に魅惑されてふらふらと動き出した兵士の前に両手を拡げたのだ。
ふたりに背を向けたその男は――リュカだった。
男はそんなリュカに背を向けたまま激しい律動をやめず、女の後頭部を手で掴んで、傷だらけの肩に噛みつかせた。
まるで、お前の相手は自分だと独占欲を露わにしたように。
そして一段と突き上げが大きくなる。
「はああああっ、ああっ、んんっ、あああ……っ!!」
興奮のあまり、男の背中に爪を立てる女。
果てが近いのか、その艶めいた声は切羽詰まったものとなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ、まだイカせねぇよ」
男は女の耳にかじりつくようにしながら、小さな声音を女の鼓膜の奥に押し込んだが、女は理解するよりも、その刺激に体を震わせるだけだった。
「お退き下さい。我々は検分を」
「そうだ、あの女をよく検分を」
色に狂うあの女を思う存分貫きたい……そんな欲を滾らせる兵士達の前で、両手を拡げたままのリュカは凜とした声で言った。
「あんな淫乱な女は……ユウナではない」
俯き加減で翳った顔は表情が覗えない。
「だから、そんな女を抱く男は、サクじゃない。
サクは……ユウナ以外を抱くことはない」
ただ、その声音は、低く冷たく――。