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吼える月
第13章 献身
「だけどその情熱的な虫のおかげで、お前が戻ってくる頃には、弟か妹が出来ているかも知れねぇぞ? 俺もサラも、予想以上のお前の激しい貫き具合に火がついたからな。初めてであれだけ出来るとは、さすがは俺の息子だ」
「――っ!!! んなこと、わざわざ息子に言わなくてもいいだろう!? 褒めるなら別のところを褒めてくれよっ!!」
「……サク。諦めるな」
不意にハンは真顔になった。
「あ?」
「絶対諦めるんじゃねぇぞ。生きることも……姫さんも」
「親父……?」
「俺は、お前に出来る限りの武術を叩き込んだ。どんな苛酷な状況でも、ひとりで生きていけるだけのものを、育て鍛え上げてきたつもりだ。もうお前は……俺の影に憂うことはねぇぞ」
「………」
「俺より力がないと思うのは、お前の中に"甘さ"があるからだ。だがその甘さがあるからこそ、今のお前がある。甘さは優しさ。それがお前の身を助けるのか滅ぼすのかは、お前の行動次第。すべては、お前の心のままに」
そしてハンは、サクの腕をとった。
腕輪をずらせば、邪痕は消えていた。
「お前は、凌いだんだ。ならば、今度は姫さんと生きろ」
「……親父、なんだよ……。なんだか今生の別れみてぇなこと……」
「………。それくらいの覚悟で行け。親は……遅かれ早かれ、いずれかは死ぬものだ。死ぬ時は、後悔だけはしたくねぇ。
俺の後悔があるとするのなら、それはお前のことだ」
「………」
「俺は早くに武神将を降りて、お前に譲ればよかったんだ。そうすればお前は、あそこまで苦しまずにすんだ。……姫さんを凌辱させずにすんだかもしれないのに。……お前の心を抉らずにすんだのに」
「……親父……」