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吼える月
第13章 献身
「イタチの説明はいい。お前が作ったってなんだ」
「意識の主位は玄武みてぇなんだがよ、どうも亀ってされるのが気にくわねぇらしいんだ。で、だ。あいつの質問に答えられたら力を貸してくれるっていうから、答えたらなんと正解でさ。だからこっちも、約束の証として、白いふさふさ姿にしてやったんだ。ま、俺の頭にすぐ浮かんだのがたまたまイタチだったんだけどさ。
そうか、他の目からは亀に見えるのか。それ知ったら、あいつまた"シャーッ"って怒るな。俺……力つけて誰の目からもイタチに見えるように作ってやらねぇと。力の使い方ってのが、どうもまだよくわからなくてさ」
腕を組んで首を傾げるサクの横で、ハンはぶつぶつと唱えていた。
「イタチだから……ネズミか。俺また、あの亀は肉食なのかと……」
「イタチだからに決まってるだろ。ネズミ食う亀なんて、気持ち悪いだけだし、どうやって食うのさ。先住者の影響もある、野生イタチの本能に染まったんだろ。っていうか、親父。それ……もういい加減どうにかしたらどうだ?」
サクがハンの頭を指さした。
「それ?」
「頭の上にある尻尾だよ、ほら」
サクが摘まみ上げたのは、細長いネズミの尾5本だった。
「なんだこれ……」
「ああ、そう言えばイタ公、親父にネズミ貰って喜んでいたぞ。感謝の印に、おいしいところを親父に残したらしい。人間が食うかっての。あいつ常識ねぇのかな……」
「……亀が……玄武が、本当にネズミ食うのか……。そう言えば、俺が手にしていたネズミ、いつの間にかなくなっていたが……あの亀が、俺に気づかれずに奪い取って食って頭に尻尾残して消えたのか……。俺、あの亀に負けたのか……。そこまで落ちぶれたか……。いや、ここは聖獣だから仕方が無いと思うべきなのか……」
「深く考えるなよ、親父。あいつあの姿、結構気に入っているみたいだから、亀だということは言わないでくれよ? あくまでイタチとして扱ってくれ。
あいつ俺の体をバキバキ骨砕いて、やりたい放題痛めつけてくれたけどよ、結構いいところあるんだ。イタ公と仲良くやってくよ」