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吼える月
第13章 献身
「……サク、ちなみに……そのイタ公が出した問題ってのは、『白虎、青龍、朱雀にあって、玄武にないもの』って奴か?」
「そうそう。なんだ俺、口走ってたのか」
「正解はなんだ?」
「親父わかんねぇのか? 前に絵巻物見せて貰ったじゃねぇか。四聖獣の」
「外貌的なものか? ………。で、結果がイタチ……。まさか」
サクは破顔して言った。
「そう、答えは……『毛』さ。
イタ公、黒くてつるつるの亀ってのが無性に嫌らしい。だから俺は逆に白くてふさふさにしてやったんだ。親父の時は、不平不満言ってなかったのか?」
「俺の時は……」
声すら聞こえなかった玄武の力。
玄武が実在する存在として声を発して輪郭を持って、サクの前に現れた。
しかもサクは不可視のそれに形を与え、可視の状態にしている――。
もうそれだけで。
「お前は既に俺を超えているよ、サク」
ハンは嬉しそうに笑った。
その顔には、サクを旅立たせることに微塵の後悔もないものだった。